先に音節構造の話からする。
日本語の音節構造は最大で C1C2G1VG2 である。
ここで、C は子音、G はグライド、V は音節主音(主に母音)である。
なお、この音節構造は 教育ローマ字 の資料内で提案されているものである。より詳しい話はそちらを直接参照するのが良い。
C は 無し・C2・C1C2 のいずれかである。ただし C1C2 の場合、C1 と
C2 双方ともに無声子音である。
従来 i, u が「無声化」していると考えられてきた部分は実際には母音が脱落しており、
C1C2 はそこに現れている子音クラスターで、
C1 は、u が脱落したならそのまま、i が脱落したなら硬口蓋化する。
C2 には全ての子音、C1 には全ての無声子音とその硬口蓋化音が現れる。
C1, C2 いずれも長くなれる。
G1 の存在は任意で y のみが来る。y は前の子音を硬口蓋化する。
G2 の存在も任意で ĭ, n̆ の他、わずかな例で ĕ, ŭ も現れる。
(ブレーヴェは C や V と区別するために付している。)
ただし V が長いときは G2 は現れない。
ĭ は V が a, u, o の時に現れ、ĕ, ŭ は V が a の時のみ現れる。n̆ はいずれの場合にも現れ得る。
V は a, i, u, e, o の他わずかに ɴ が現れる(区別のため small capital を用いている。)
ɴ が V の時は C や G は現れない。また、いずれも長くなれる。
以下、下の様な記号を用いて表すこととする。
C1 = {∅, ku, ki, su, šu, ši, tu,
ti, cu, ču, či, fu, hi, pu,
pi}
C2 = {∅, k, g, s, z, š, ž, t, d, c, č, n, h, f, b, p, m, y, r, w}
G1 = {∅, y}
V = {a, i, u, e, o, ɴ}
G2 = {∅, ĭ, n̆, ĕ, ŭ}
ただし、上付きの i, u は脱落した母音を表し、š, ž, c, č はそれぞれシャ行、ジャ行、ツァ行、チャ行の子音を表す。
長子音は2重にすることで示し、長母音は上にマクロンを付すことで示す。
音節は tseg「་」で区切る。
基本的な文字は以下の通り。
発音 | 文字 | 発音 | 文字 |
---|---|---|---|
a | ཨ | - | - |
ka | ཀ | ga | ག |
sa | ས | za | ཛ |
ša | ཤ | ža | ཇ |
ta | ཏ | da | ད |
ca | ཙ | ča | ཅ |
pa | པ | ba | བ |
ma | མ | na | ན |
ha | ཧ | ra | ར |
ya | ཡ | wa | ཝ |
fa | ཕ | - |
文字は後に示す母音記号が無ければ、後ろに母音 a が付いているものとして読む。
発音 | 文字 | ཀ での例 | 発音 | 文字 | ཀ での例 |
---|---|---|---|---|---|
a | - | ཀ | ā | ◌ཱ | ཀཱ |
i | ◌ི | ཀི | ī | ◌ཱི | ཀཱི |
u | ◌ུ | ཀུ | ū | ◌ཱུ | ཀཱུ |
e | ◌ེ | ཀེ | ē | ◌ཻ | ཀཻ |
o | ◌ོ | ཀོ | ō | ◌ཽ | ཀཽ |
a 以外の母音は上の様な母音記号を付けることで表す。
長母音は下に ཱ を付けるか、線を二重にして表す。
長子音(促音)は、上または左に ར (r) を付して表す。
\ | 文字 | 例 |
---|---|---|
C̄(促音) | ར◌ | རྐ (kka) |
子音クラスター C1C2 は、C1 と C2 に対応する文字を縦あるいは横に並べて表す。
ただし C1 が k, t, p の時は、ཀ (k), ཏ (t), པ (p) の代わりに ག (g), ད (d), བ (b) を用いる。
縦か横かで違いはない。(例: ナスカ na.suka = ན་སྐ or ན་སཀ)
ཤ (š), ཅ (č) 以外は、何もつけず並べると Cu を表す。Ci を表記する場合は下または右に ྱ (y) を付す。
一方 ཤ (š), ཅ (č) では、何もつけないと Ci を表す。Cu を表記する場合は下または右に ྭ (w) を付す。
\ | 文字 | 例 |
---|---|---|
Cu (C ≠ š, č), {š, č}i | 各文字単独 | གཙུ་ཤཏ་ (靴下 kucu.šita) |
{š, č}u | ཤྭ, ཅྭ | ཧཽ་ཤྭཙུ་ (放出 hō.šucu) |
Ci (C ≠ š, č) | ◌ྱ | གྱཙུ་ནེ་ (キツネ kicu.ne) |
G1 y は音節核の字の下または右に ྱ (y) を付す。G2 ĭ, ĕ, ŭ は、それぞれ右側に འི, འེ, འུ を付して表す。n̆ は、核の字に rjes su nga ro「 ཾ」を付して表す。
\ | 文字 | ཀ での例 |
---|---|---|
G1 y(拗音) | ◌ྱ | ཀྱ (kya) |
G2 ĭ | ◌འི | ཀའི (kaĭ) |
G2 n̆(撥音) | ◌ཾ | ཀཾ (kan̆) |
G2 ĕ | ◌འེ | ཀའེ (kaĕ) |
G2 ŭ | ◌འུ | ཀའུ (kaŭ) |
音節主音的鼻音 ɴ は、ང (ng) で表す。(例: ンジャメナ ɴ.ža.me.na ང་ཇ་མེ་ན་)
上に挙げた子音クラスター、拗音グライド G1 など、字を上下に重ねるものは、それを左右に並べて表記しても問題ない。
「畢竟 (hikkyō)」は ཧྱརྐྱཽ་, ཧཡརྐྱཽ་, ཧཡརཀྱཽ་, ཧཡརཀཡཽ་ の全てが許される。
tseg の中が1文字の時、それが音節核である。
2文字以上の場合、
音節核の後にはグライドしか来ないので、グライドの字 (འི, འེ, འུ) があれば、その直前が音節核であるし、それが無ければ最後の字が音節核である。
ただし拗音「子音字 + ཡ」や促音「ར + 子音字」の場合は、2文字で1つの音節核とみなす。
チベット語において通常分かち書きはしないが、この表記では文節毎にスペースを入れることも可能とする。(入れなくてもよい)
ただし末尾に tseg を付ける。
読点には gter tsheg「༔」を使い、句点には shad「།」を使う。これらが付く際 tseg は不要。 段落の終わりには nyis shad 「༎」を使う。
例:
ཀྱཽ་ནོ་ ཨ་ས༔ ཝ་ཏ་ཤི་ཝ་ རཾ་ནིཾ་གུ་ཨོ་ ཤཏ། —— 今日の朝、私はランニングをした。
単語 | 音節構造 | 表記 |
---|---|---|
神 | ka.mi | ཀ་མི་ |
階段 | kaĭ.dan̆ | ཀའི་དཾ་ |
北 | kita | གྱཏ་ |
牛乳 | gyū.nyū | གྱཱུ་ནྱཱུ་, གཡཱུ་ནཡཱུ་ |
浅草 | a.sa.kusa | ཨ་ས་གས་ |
区間 | kukan̆ | གཀཾ་ |
即興 | so.kkyō | ས་རྐྱཽ་ |
楽器店 | ga.kkiten̆ | ག་རྒྱཏེཾ་ |
死刑執行 | šikē.šikkō | ཤཀཻ་ཤརྐཽ་ |
ンガウンデレ | ɴ.ga.un̆.de.re | ང་ག་ཨུཾ་དེ་རེ་ |
ཨོ་ཤ་རེ་ནོ་ ཀྱོ་གཅི་ད་ ཕ་རྴོཾ་སེཾ་ཏཱ་
རྱཽ་ཏེ་ཨོ་ ཀ་ཀ་གེ་ཏེ་ ཀུ་ར་རྤྱོ་ཧེཾ་ཛ་
ཇཱ་ཇི་ནི་ ཝའི་ཤ་ཙུ་ ཛེ་རྟའི་ཧེཾ་ད་
ཨེ་མུ་ཨའི་དཱི་ཨའི་ ཏོ་ར་རྐུ་མེ་ཨི་ཀཱ་
ཨོ་ཤ་རེ་ནོ་ སཻ་ཅི་ད་ ཕ་རྴོཾ་སེཾ་ཏཱ་
རྱཽ་ཏེ་ཨོ་ ཀ་ཀ་གེ་ཏེ་ ཀུ་ར་རྤྱོ་ཧེཾ་ཛ་
ནཽ་ཀི་ཝ་ ཨ་ཤཏ་ད་ ཛེ་རྟའི་ ཏེ་ཙུ་ཡ་
ཨེ་བི་དེ་ཨི་ ཨེ་བི་ནའི་ ཏོ་ར་རྐུ་མེ་ཨི་ཀཱ་
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